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紀 行 文 
2002年秋カナダ
 

 青空とロッキー山脈
 2002年10月10日、カルガリーは雪であった。空港の滑走路もターミナルビルもはるか
かなたのダウンタウンの高層ビル群も灰色の景色の中に沈んでいた。こんなに早い時期に
積雪を見るのは珍しいとのこと。絶え間なく降りしきる雪の中をパスはロッキー山脈に向
けて出発。車恵から見える景色は一面ただ灰白色。驚いたことに、突然の降雪のためにス
リップして道路からはみ出した車両があちこちの畑や牧場に突っ込んでいる。乗用車が、
RV車が、傷ついた大きな鷲鳥のように首を内側にガクッと曲げてうずくまる大型トレー
ラーも。中には何であんなところまでと思われるような、道路から数十メートルのかなた
に轍の跡を引き摺って佇んでいるものもある。
 平原を抜け、ようやくロッキー山中に入っていく。針葉樹林の黒と新雪の白とのコント
ラストが印象的である。アスペンポプラの華やかな黄色が刺激的に目に飛び込んでくる。
ようやく雪も小降りになり周辺の山々がおぼろげにその姿を見せ始めた頃、ホテルに到着。
ザ・フェアモント・シャトー・レイクルイーズ。ある旅行雑誌のアンケートで、世界の印
象に残ったホテルの第1位に選ばれただけあって、胸のときめくようなシャトーホテルで
ある。前面に静かに佇むルイーズ湖、それを取り巻く山頂に氷河をいただく山々。雲の切
れ間から差し込む陽光に湖面の一角が幻想的に光っている。ロッキーの夜の帳の中に抱か
れて湖畔の宿は静かに暮れていった。
 翌朝、昨日までの降雪は嘘のような超快晴。ルイーズ湖を見下ろす周辺の山々の頂は朝
日を受けてオレンジやピンクの輝く色に染まっている。空の色がこんなに青かったことに
初めて気がついたような気がした。紺碧、群青・・・・。いや、何と表現したら良いのだ
ろう。とにかく青いのだ。青く輝いているのだ。その青い空に吸い込まれるように白くた
おやかな峰々が車窓を横切る。ケフレン山、アウトラム山、シラーズ山等々、3000メート
ル級の山々が青い大空に食い込んでいる。不思議な青さの氷河を巻き込んだ峰。そこに立
っているだけで身体中が青く染まってしまいそうな湖沼群。昨日に比べてまた一段と鮮や
かな黄金色に光るアスペンポプラの木々。ケベックやモントリオールなどのカナダ東部地
方が燃えるような紅葉に覆われていたのに対して、ここロッキーの秋は黄葉に抱かれてい
る。雪煙の上がるコロンビア大氷原から流れ出したアサバスカ氷河の上空もあくまで青か
つた。
 退職後は国内外のいろんなところの旅をした。社会科の教員として40年近く教壇で語っ
てきた世界の地理的・歴史的事象。現役のときに各地に出かけていればもっと生きた授業が
できたであろうが、私にとってそれは時間的にも、経済的にも無理であった。それが有り
余る時間と、少しはゆとりのできた今このとき、これまで自分の歩んできた道のりを、現
実にこの目で確かめ、この手で触れることができるようになったことで、何ともいえぬ安
堵感と感激に浸ることを喜びとしているし、本当にありがたいことだと思っている。

 これからも、お互いに体力の続く限り、苦労をかけてきた妻と、まだ出かけたことのな
い各地を廻ってみることを楽しみにしている。
荒木俊之(高9)

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